雁丸(がんまる)の原作代読映画レビュー

原作読んで映画レビューするよ!

当ブログ的2017年公開作品ベスト10

こんにちは、当ブログ管理人の雁丸です。

 

2018年に入って半年が過ぎようとしているのですが、今更ながら当ブログで扱った映画のベスト10を発表しようと思います。

こういうのって年末にやるべきなんでしょうがとりあえず見ていってください。

今回選定した10作品は全て当ブログで扱った作品のみに限らせてもらいました。

 

それでは第10位から…

 

10位

 ダブルミンツ

f:id:nyaromix:20170623001711j:plain

映画『ダブルミンツ』と原作漫画『ダブルミンツ』(ネタバレあり)

 中村明日美子先生の同名ボーイズラブ漫画を原作にした本作。原作に忠実でありながら、内田監督の引き算の演出によって映画的行間の多い作品に仕上がっていました。主演2人の演技も素晴らしく、特に田中俊介さんという逸材を知れたのも良かったです。

 この作品(と明日美子先生の過去作として読んだ『同級生』)が、自分にとって初めて読んだBL漫画だったのですが、こんなに面白いものなのか!と新しい扉を開くきっかけになった映画でもあります。(性的思考としての新しい扉ではないです・・・)

 

9位

 『怪物はささやく

f:id:nyaromix:20170618025055j:plain

映画『怪物はささやく』と原作小説『怪物はささやく』(ネタバレあり)

カーネギー賞を受賞したシヴォーン・ダウド原案の同名児童小説を J.A.バヨナ監督が映像化した本作。バヨナ監督が得意とする母性愛の物語が原作のテーマ性とぴったりと合致しており、美しくも悲しい親子の物語になっていました。

物語(もとい現実)の不条理さを主人公の少年に突きつける残酷な物語でありながら、それを受け入れる彼の成長に涙が溢れました。

バヨナ監督の次回作は『ジュラシック・ワールド 炎の王国』ですが、そこでも主人公とラプトルの親子関係の物語が描かれそうなので期待しています。

 

8位 

 『夜は短し歩けよ乙女

f:id:nyaromix:20170420211225j:plain

 映画『夜は短し歩けよ乙女』と原作小説『夜は短し歩けよ乙女』(ネタバレあり) 

森見登美彦湯浅政明監督が『四畳半神話大系』以来の再タッグを組んだ本作。

 ある種ドラッギーなほど見ていて気持ちのいいアニメーションで、こじらせ男子の恋愛模様を愉快に描いていました。原作では春夏秋冬の4部構成だった内容を一夜の出来事として描くという力業で、ジェットコースタームービーのような印象を受けました。

「人と人との縁」という要素を原作よりも膨らませていて、青春賛歌であり人生参加でもある素晴らしい出来栄えでした。

 

7位 

『愚行録』

f:id:nyaromix:20170223003632j:plain

映画『愚行録』(ネタバレあり)

当ブログで扱った記念すべき1本目の作品でもある『愚行録』。

叙述トリックの効いた難しい原作を見事に映像に落とし込んだ素晴らしいアダプテーションがなされていました。

 ひたすら最悪な人間ばかりが出てくるのですが、生きていくためのしたたかさや、自分のポジションを守るためのマウンティングなど、どこか他人事とは思えない人間性の悪さは強く胸に突き刺さります。愚かしい人々が織り成す物語の中で、わずかながら描かれる善性にも心を打たれました。

 

 6位

 『彼女がその名を知らない鳥たち

f:id:nyaromix:20171108010203j:plain

 映画『彼女がその名を知らない鳥たち』と原作小説『彼女がその名を知らない鳥たち』(ネタバレありの感想)    

凶悪』の白石和彌監督が手掛けた、イヤミスの女王・沼田まほかるの同名小説の映画化作品。

原作に忠実でありながら、映画的ギミックを活かした見せ方が存分に加えられており、登場人物たちの心情をより克明に描き出していました。原作では冒頭で描かれていた主人公カップルの出会いのシーンを映画ラストに持ってくることで、献身的な愛の物語としての純度も高まっていました。

来年公開される白石監督の『狐狼の血』にも期待値が高まります。

 

5位

パーティで女の子に話しかけるには

f:id:nyaromix:20171202203811j:plain

映画『パーティで女の子に話しかけるには』と原作小説『パーティで女の子に話しかけるには』(ネタバレありの感想)

 ニール・ゲイマンのほんの数十ページしかない短編小説をジョン・キャメロン・ミッチェル監督が映画オリジナルの解釈で膨らませ、映像を眺めているだけでも楽しい独創性の高い作品に仕上がっていました。

パンクの精神が周囲に感染していく様は爽快で、エルファニングな殺人的な可愛らしさもたまらないです。

ただのボーイミーツガールのセカイ系映画ではなく、少年少女が不条理な社会のルールに立ち向かうというシビアなストーリーで、パンクだけが生きがいの少年が遥か遠い異星の秩序を変える何ともロマンに満ちた物語でした。

 

4位

エル ELLE

f:id:nyaromix:20170831004504j:plain

映画『エル ELLE』と原作小説『Oh...』(ネタバレあり)   

 感情移入や共感性などといった要素を取り払った予想を裏切る展開の連続にしびれました。「こんなひどい暴行を受けた女性は普通はこういう行動をとるだろう」という、無意識に女性を枠にはめて考えている観客の差別意識を逆手に取り、女性の多様な生き方を肯定する女性賛歌的作品でもありました。

ちょっと話は変わりますが、先日のセクハラ問題に対してのカトリーヌ・ドヌーヴの発言も『エル ELLE』っぽいなぁ、と思ったりしました。

 

3位

勝手にふるえてろ

f:id:nyaromix:20180107180819j:plain

 映画『勝手にふるえてろ』と原作小説『勝手にふるえてろ』(ネタバレありの感想) 

 昨年末に公開されて、ほぼ決まりかけていた自分のトップ10の3位にまで食い込んできた『勝手にふるえてろ』。

「お前は俺か」とツッコミたくなるほど、主人公ヨシカと同僚の二の振る舞いが過去の自分を見ているかのよう(今現在もそうかもしれない…)で、鑑賞中は心の中を搔き毟られたような感覚になりました。こんなにも幸せになってほしいヒロインは久しぶりです。

映画オリジナルで加えられているシークエンスも胸に突き刺さるもので、大九監督の手腕にも感嘆しました。

 

2位

『花筐 HANAGATAMI』

f:id:nyaromix:20171223231343j:plain

映画『花筐/HANAGATAMI』と原作小説『花筐』(ネタバレありの感想)

 御年80歳の大林宣彦監督が檀一雄の短編小説をもとに作り上げた3時間弱の超大作。戦争の悲惨さを訴えるメッセージ性を原作から拡張させ、自由に焦がれる若者たちの儚さが増幅していました。

余命3か月と宣告された中で作り上げたこの映画は“生”への渇望に満ちあふれており、きな臭くなってきた現代の社会情勢の中でこそ作られるべき作品となっています。

ご当地映画としても素晴らしい出来栄えで、唐津のくんち祭りを“権力への反骨精神”の象徴として映し出したのも秀逸でした。

 

1位

『メッセージ』

f:id:nyaromix:20170524224358j:plain

映画『メッセージ』と原作小説『あなたの人生の物語』(ネタバレあり)

テッド・チャンの短編SF小説を、今ノリにノッているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化した本作。複雑難解な原作小説を見事に整理して映像化し、映画的なタイムリミットサスペンスの要素まで盛り込んだ、素晴らしい脚色力を見せつけてくれました。

円環構造を核とした物語の構成も素晴らしく、考察してもしきれないぐらい様々な仕掛けが散りばめられています。

SF映画としては言わずもがなな大傑作ですが、母と子の物語としても完璧な一作だと思います。残酷な運命をも受け入れる母の愛には涙を禁じえませんでした。

ストーリー・映像・音楽どれをとっても超一級の作品でしょう。

 

 

 

以上のような結果となりました。

毎回レビューのたびに100点満点で個人的な評価をつけていますが、今回のランキングは付けた点数に応じて順位付けしているわけではないです。点数の低い作品が、高い作品よりも上位に来ていたりもしますが、気にしないでください。まぁ映画の評価って時価みたいなものじゃないですか(開き直り)

こうやって自分の過去のレビューを振り返ってみると、悪し様に貶している作品はほとんどないような気がします。おそらく、質の良い原作が映像化されているということと、原作をあらかじめ読むと映画の製作者のやりたいことの意図が見えてくるからだと思います。

あまり辛口のコメントが得意ではない当ブログですが、ぬるめのレビューが好きな人はこれからも是非お付き合いください。

これまでのレビューは、誰に気を使っているのか、堅苦しい文章になって面白みに欠けていたので、これからはもう少し砕けた感じでレビューを書いていこうと思います。

 

今年もよろしくお願いします(今更)。