雁丸(がんまる)の原作代読映画レビュー

原作読んで映画レビューするよ!

映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』と原作漫画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(ネタバレありの感想)

今回の紹介する作品は

映画奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』です。

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【あらすじ】

奥田民生の生き方に憧れる33歳の雑誌編集者コーロキ。ライフスタイル雑誌・マレの編集部に異動になったコーロキは、慣れない職場に四苦八苦しながらも、奥田民生のような編集マンになろうと意気込んでいた。そんなある日、仕事の関係で出会った天海あかりに一目惚れしたコーロキは、なんとかあかりに良いところを見せようと奔走するのであった…

 

【原作】

原作は渋谷直角さんの同名漫画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』です。 

奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール

奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール

 

 渋谷直角さんは『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生『空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋』など、サブカル界隈もといオシャレさん達の闇の部分を描く事に定評のある作家です。

渋谷直角さんの漫画に登場するキャラクターの多くは何かしら強い承認欲求を抱えているのですが、その承認欲求を満たすやり方が空回りしていたり、自分のセンスの限界にぶち当たったりと、なんとも痛々しいものばかりです。

しかしその痛々しさが人間らしさでもあるので、サブカル系やオシャレ系でない人が読んでもズシンとくる内容になっています。

 

【スタッフ・キャスト】

本作のメガホンを取ったのは『モテキ』や『バクマン。』を手掛けた大根仁監督です。

モテキ Blu-ray豪華版(2枚組)

モテキ Blu-ray豪華版(2枚組)

 

 大根監督は原作発売当初から渋谷直角さんに映画化の打診をしていたそうで、『モテキ』のような30代男女ラブコメがまた撮りたいという思いと、自分の得意なジャンルにぴったり合った原作に出会ったことから監督を務められたそうです。

大根監督といえば『モテキ』や『バクマン。』『SCOOP!』など漫画雑誌や情報誌などの編集部を描くことを得意としていますが、今作も編集部を舞台にストーリーが展開されています。

主人公コーロキを演じたのは妻夫木聡さん。 奥田民生に憧れながら未だ何者にも慣れておらず、もがき続ける男を見事に好演していました。

ヒロイン天海あかりを演じたのは水原希子さん。若干あざとすぎる気もしましたが、恐ろしく可愛い女性をきちんと体現していて、何よりメチャクチャ体を張ったラブシーンを幾多も演じており、映画全体をしっかり引っ張っていました。

個人的には、ライター三上ゆうを演じた安藤サクラさんがツボで、何故だかずっと見ていたかったです。 

 

【私的評価】

75点/100点満点中

恋愛コメディながらヒロインの内面をはっきりと明かさず、ほぼ男性主観で物語が進むので、主人公をはじめとする男たちの痛々しさを共有でき、大変面白かったです。

特殊な面のあるヒロインですが、男たちにとっては世の女性に対して普段から思っている「女の人って分からない」感がしっかりと表現されていて、主人公の気持ちに同調しやすい作りになっていました。

ヒロインがきちんと魅惑的に映っている時点で、この映画の大半は成功している気もします。

男性心理への共感はあったものの、主人公の仕事に対してのスタンスが原作より共感し辛くなっていたのが少々残念でした。

 

 

 

 以下ネタバレあり

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映画『ワンダーウーマン』と原作コミック『ワンダーウーマン』(ネタバレあり)

今回紹介する作品は

映画ワンダーウーマンです。

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【あらすじ】

アマゾン族と呼ばれる女性だけが暮らす島セミッシラ。その島の女王の娘ダイアナは、アマゾン族の女たちに育てられ、屈強な戦士として育てられてきた。そんなある日、セミッシラに他国から飛んできた飛行機が不時着する。その飛行機を操縦していたのはアメリカ外征軍の大尉・トレバーという男であった。ドイツ軍の侵攻によって世界中で数多の犠牲者が出ていることを知ったダイアナは、軍神アレスを倒し戦争を終わらせるためトレバーと共にセミッシラを旅立つのだった…

 

【原作】

原作はウィリアム・モールトン・マーストンのコミックが祖となり、現在までシリーズ化されているアメリカンコミックワンダーウーマンです。

米国では1941年から現在に至るまで刊行されているシリーズですが、日本ではワンダーウーマン単体の単行本はまだ4冊ほどしか発刊されていません。逆に言えば、今からコミックを集めても十分揃えきれる作品ではあります。 

以下の4作が、現在日本語訳され刊行されているワンダーウーマン単体のコミックスです。

ワンダーウーマンというキャラクターを知るために取っつきやすいアンソロジー 

ワンダーウーマン アンソロジー

ワンダーウーマン アンソロジー

 

 ↓ワンダーウーマンのバトルシーンに重きを置いたベストバウト

ワンダーウーマン:ベストバウト (ShoPro Books)

ワンダーウーマン:ベストバウト (ShoPro Books)

 

 ↓正史をベースにしながら、舞台を現代に切り替えて語りなおしたアースワン  

ワンダーウーマン:アースワン (ShoPro Books)

ワンダーウーマン:アースワン (ShoPro Books)

 

 ↓映画版には登場しなかった半獣の女・チーターが登場するDCリバースというシリーズのザ・ライズ 

ワンダーウーマン:ザ・ライズ (ShoPro Books DC UNIVERSE REBIRTH)

ワンダーウーマン:ザ・ライズ (ShoPro Books DC UNIVERSE REBIRTH)

 

 

ワンダーウーマン単体の単行本ではないもののDCユニバースのアンソロジーとして、彼女のエピソードが登場するコミックもあります。

ワンダーウーマン初登場のエピソードが収録されているDCコミックスアンソロジー  

DCコミックス アンソロジー

DCコミックス アンソロジー

 

 ↓NEW52!というシリーズでのワンダーウーマンの生い立ちが収録されているDCキャラクターズ:オリジン 

DCキャラクターズ:オリジン (ShoPro Books THE NEW52!)

DCキャラクターズ:オリジン (ShoPro Books THE NEW52!)

 

 まだ日本語訳がされていないコミックも多いですが、更に気になる方は電子書籍や輸入盤で英文のコミックを読んでみるのもありだと思います。 

Wonder Woman Vol. 1: Blood (The New 52)

Wonder Woman Vol. 1: Blood (The New 52)

 

 ワンダーウーマンは、DCコミックスにおいて“トリニティ”と呼ばれる3大ヒーロー(スーパーマンバットマンワンダーウーマン)の一角で、本国では絶大な人気を誇るキャラクターです。

トリニティの3人をはじめとするDCコミックのヒーローたちは、いずれも長期シリーズのため、ストーリーラインに矛盾が生じることも多々あります。そのためDCでは「多元宇宙(マルチバース)」と呼ばれる概念を用いており、同一のヒーローでも別の世界線にいるということにして、矛盾を解消したり、設定を仕切り直したりしています。

なので、今回の映画版も「これが絶対的な原作エピソード」と呼べる作品がなく、様々な世界線から要素を抽出しているような形になっています。

 
 原作者のマーストンは著名な心理学者であり、嘘発見器を開発に携わった発明家でもあります。ワンダーウーマンに登場する“真実の投げ縄”は嘘発見器の投影とも言われています。

また、マーストンは妻のほかにオリーブ・バーンというもう一人のパートナーがいたそうで、ダイアナのキャラクター造形にはオリーブの存在が多大な影響を与えているそうです。

 

 【スタッフ・キャスト】

本作のメガホンを取ったのは『モンスター』を手掛けたパティ・ジェンキンス監督です。

モンスター [DVD]

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監督にとっては『モンスター』以来、14年ぶりの長編映画監督作になります。

ジェンキンス監督は、DCEUの企画が立ち上がる以前からワーナーブラザーズに対して「私にワンダーウーマンを撮らせてほしい」をアプローチを掛けていたそうで、その念願がかなって本作の監督に抜擢されました。その結果、本作の大ヒットにより女性監督作品で歴代第1位となる興行収入をあげています。(その他の監督候補には『ブレイキング・バッド』や『ゲーム・オブ・スローンズ』の女性プロデューサー・ミシェルマクラーレンさんも挙がっていたそう)

 脚本には2006年からワンダーウーマンのコミックのシナリオを手掛けているアラン・ハインバーグさんが関わっており、コミックの世界観も丁寧に組み込まれています。

ヒロイン・ダイアナを演じたのはガル・ガドットさん。イスラエル国防軍で戦闘トレーナーとして勤めていた経験を持つ彼女は、コミックのダイアナを現実世界にそのまま映し出したような佇まいで、逞しすぎるワンダーウーマンを演じるにはこれ以上の適役はいないのではないかと思わせてくれる存在感でした。 

 

【私的評価】

68点/100点満点中

 本作はDCコミックスの映画化プロジェクトであるDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の第4作目になるのですが、その4作の中でも一番出来のいい作品になっていたと思います。

女性の地位が低かった時代を、物語の舞台背景にしたことで女性ヒーローのたくましさがより引き立ち 

特に第2幕の展開は、男性を率いる女性のカッコよさと、民衆を救い出すヒーローとしてのカッコよさが両立した素晴らしいシークエンスに仕上がっていました。

 ただ、クライマックスにかけての展開に様々な矛盾を感じもやもやするところもありました。

 

 

 

 

以下ネタバレあり

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映画『エル ELLE』と原作小説『Oh...』(ネタバレあり)

 

今回紹介する作品は

映画エル ELLEです。

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【あらすじ】

ビデオゲーム会社の社長を務める敏腕経営者・ミシェルは、パリの郊外に一人で暮らしていた。ある日の午後、突然家に押し入ってきた覆面の暴漢に、ミシェルは激しい暴行を加えられレイプされてしまう。しかし、犯人が去って行くとミシェルは荒らされた部屋を整理し、何事もなかったかのように息子のヴァンサンに振る舞った。自分の身近な人が犯人なのではないかと考えたミシェルは、会社の社員などに探りを入れるが、犯人は見つからず、それどころか彼女の元にはレイプ犯からのメッセージが送りつけられてくるのだった…

【原作】

原作はフランスの作家フィリップ・ディジャンの小説『Oh…』です。

エル ELLE (ハヤカワ文庫NV)エル ELLE (ハヤカワ文庫NV)

 

本作はフランスの5大文学賞の一つであるアンテラリエ賞を受賞した作品で、過激な内容ながら本国で14.5万部も売り上げたベストセラー小説です。

著者のフィリップ・ディジャンは発表した作品が数多く映像化されている作家で、『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』をはじめ『許されぬ人たち』『愛の犯罪者』(どちらも日本劇場未公開)などの映画に原作提供をしています。

作者のディジャンは本作の執筆中、イザベル・ユベールのことを思い浮かべることが度々あったそうで、ミシェル役が彼女に決まったときは願ったり叶ったりだったそうです。

 

 【スタッフ・キャスト】

本作のメガホンをとったのは『ロボコップ』や『トータルリコール』のポール・ヴァーホーベン監督です。

 ヴァーホーベン監督は『氷の微笑』や『ショーガール』などエロティックで変態性の高い画をとることに長けているので、この小説を映画化するにあたっての起用は極めて監督の資質にあっているといえるでしょう。

本作の原作中には、テレビの制作会社で働く主人公のミシェルが、出来の悪い脚本を次々とボツにいていく描写があるのですが、その様が映画『ポール・ヴァーホーベン/トリック』の中で監督が一般公募の脚本を斬り捨てていく姿ととても良く似ていて、監督は主人公のこの部分に共鳴したのではないかと勘ぐってしまいました。

撮影監督を務めたのは『君と歩く世界』や『ジャッキー/ファーストレディ最後の使命』などでもその手腕を発揮したステファーヌ・フォンテーヌ。本作では手持ちカメラを効果的に使っており、登場人物たちの秘密を覗き見るようなスリリングなカメラワークが多く見られました。

主人公ミシェルを演じたのはフランスの至宝イザベル・ユベール。御年64歳とは思えぬ妖艶な魅力を振りまいており、体を張った演技を含め、彼女以外では体現できないようなキャラクターに仕上げていました。元はハリウッドで製作される予定だった映画なのですが、イザベル・ユベールが主演に決まったことにより、フランスで撮影されることになったほど、彼女の存在はこの映画の基軸になっています。

 

【私的評価】

91点/100点満点中

主人公にどれだけ感情移入できるかが作品への評価に直結しがちな昨今、ヴァーホーベン監督はそんな観客に対して見事なまでのカウンターをかましてくれました。とにかく観客に意表を突く展開が連発され、何度も観客側の想像を裏切ってくれるので、終始興味が尽きることなく鑑賞できました。

かなり好き嫌いの別れそうな映画ですが、監督は意図して登場人物への共感性を排除しているので、理解しえない主人公の行動原理をどうにか読み解こうとすることが楽しいタイプの作品です。

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレあり

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映画『君の膵臓をたべたい』と原作小説『君の膵臓をたべたい』(ネタバレあり)

 

今回紹介する作品は

映画『君の膵臓をたべたい』です。

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【あらすじ】

 高校の国語教師として母校に努める“僕”は、取り壊されることになった図書館の蔵書整理を任される。その図書館は“僕”がかつてクラスメイトの山内桜良と図書委員を務めた思い出の場所だった。

12年前、“僕”は偶然訪れた病院内でとある文庫本を見つける。「共病文庫」というタイトルがつけられたその本の中には膵臓の病気を告白する少女の手記が綴られていた。その本の持ち主であった山内桜良は、いつものような笑顔で“僕”に対して病気を抱えていることを打ち明けた。この“僕”と彼女が共有する秘密が二人を結びつけ、次の日から“僕”の日常が変わり始めるのだった…

 

【原作】

 原作は住野よるさんの同名小説『君の膵臓をたべたい』です。

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

 本作は住野先生のデビュー作で、作者が小説投稿サイト小説家になろうに投稿した短編が『ドラゴン・イェーガー』などで知られるライトノベル作家の井藤きくさんの目に留まり、双葉社からの出版が決まった作品です。

出版されるやいなや本作は話題を呼び、2016年のベストセラーランキングでは文芸書部門で一位を獲得(トーハン調べ)しました。

小説家になろうから出版された作品は「なろう系」と呼ばれ、文体や物語構成にライトノベルっぽい質感があるのが特徴なのですが、本作にもそのような部分が見られます。女の子の気持ちに対して鈍感な主人公や、明朗快活で主人公を引っ張ってくれるヒロインなど、ライトノベルの王道のような展開で、僕のようなボンクラ男子読者は主人公に自分を重ねて物語を楽しめる作りになっています。

 

【スタッフ・キャスト】

本作のメガホンを取ったのは『黒崎くんの言いなりになんてならない』や『君と100回目の恋』などを手掛けた月川翔監督です。

映画「君と100回目の恋」 [Blu-ray]

映画「君と100回目の恋」 [Blu-ray]

 

 月川監督は近年、青春映画の監督を多々務めており、職人監督としての手腕に磨きをかけています。

 映画『ハルチカ』を評した時に市井監督のことを三木孝浩監督や廣木隆一監督に次ぐ青春映画の名監督になるのではと述べたのですが、月川監督もその1人になる気がします。

実際に月川監督は、映画『クローズド・ノート』でメイキングを担当していた三木監督のアシスタントを務めていた経験もあり、その手腕はしっかり引き継がれています。

本作の劇中での光の使い方などは三木監督の作品の画作りを彷彿とさせ、良い部分をちゃんと吸収している事が分かります。

脚本を務めたのは吉田智子さん。吉田さんは『僕らがいた』や『ホットロード』『アオハライド』など三木監督とタッグを組んだ映画を多く手掛けています。

このように本作は三木監督が直接関わっていないものの、三木印の雰囲気をまとった作品になっています。

 

本作のキャストの中で物語の根幹を握っているのが、山内桜良役の浜辺美波さんです。

病気にさらされながらも明るく生きようとするヒロインを本当に見事に好演していました。

彼女がきちんと魅力的に映っている時点でこの映画の6,7割は成功していると言って過言ではないと思います。

 

 【私的評価】

80点/100点満点中

原作のストーリーを忠実に映像化しつつ、主人公たちの12年後の姿を映画版オリジナルの要素として加える事で物語に奥行きを出しており、よく出来た改変がなされていました。

 何よりヒロインが恐ろしいほど魅力的に映っており、周囲に影響を与えていく様にきちんと説得力がありました。

ただ一箇所、原作でも不満に感じていたところが映画版でも解消されておらず、少しモヤモヤする部分がありました。

 

 

 

 

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映画『銀魂』と原作漫画『銀魂』(ネタバレあり)

今回紹介する作品は

映画銀魂です。

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【あらすじ】

江戸時代末期、宇宙人(天人)の襲来によって文明は飛躍的に発達した一方、廃刀令によって侍は衰退の一途をたどっていた。そんな江戸はかぶき町、かつて攘夷戦争で“白夜叉”の異名で恐れられていた坂田銀時は便利屋を営み、従業員の志村新八や、居候の少女・神楽と共に暮らしていた。

ある夜、謎の辻斬りによって銀時の盟友・桂が凶刃に倒れ、桂の相棒・エリザベスが助けを求め万事屋へと訪れた。その一方で、銀時のもとには鍛冶屋の兄妹からも依頼が入っていた。それは盗まれた妖刀「紅桜」取り返してほしいというものだった…

【原作】

原作は空知英秋先生の同名漫画『銀魂』です。

銀魂-ぎんたま- 1

銀魂-ぎんたま- 1

 

 2003年12月より連載が始まった『銀魂』は、現在までに69巻が発刊されており、累計発行部数は5,100万部を超える大ヒットコミックです。

2006年からはアニメ版も放送され、今作の元にもなった紅桜篇の映画版『劇場版銀魂 新訳紅桜篇』と、空知先生の書き下ろしエピソード『劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』(完結篇と言っておきながら、いつもの終わる終わる詐欺でしたが)の2本がアニメ映画化されています。

 実写版では1巻の冒頭部分と10巻のカブト狩りのエピソード、そして11巻と12巻の紅桜篇を元にしてストーリーを組み立てています。

余談ですが、空知先生は一度撮影現場に見学に行ったそうですが、キャストの誰からも話しかけてもらえなかったそうです。

 

【スタッフ・キャスト】

本作のメガホンを取ったのは『勇者ヨシヒコシリーズ』や『HK 変態仮面』などを手掛けた福田雄一監督です。

HK/変態仮面

HK/変態仮面

 

 勇者ヨシヒコ放映時から福田監督の元には銀魂の実写化をしてほしいというツイートが寄せられていたそうで、監督が子供とたまたま目にしたアニメ版銀魂の面白さに嫉妬と自作への親和性を感じ、プロデューサーに掛け合ったそうです。空知先生も「福田監督なら」ということで実写化を許諾したそうです。

本作は撮影や音楽、編集、照明などほとんどのスタッフが福田監督の過去作に携わっている福田組の方たちなのですが、いつもの福田監督作と違った風合いを与えているのがアクション監督のChang Jae Wook(チャン・ジェウク)さんです。迫力のあるアクション演出を多く見せてくれますが、特に戦闘民族・夜兎族の神楽のアクションは尋常でない動きでキャラクター性がはっきりと表しています。

また、本作は『写楽』や『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』でアカデミー賞最優秀賞を獲得した名美術監督池谷仙克さんの遺作(昨年10月に逝去)ともなっています。かぶき町の街並みや万事屋のセットなど原作しっかり踏襲した素晴らしい美術を披露しています。
主人公・銀時を演じたのは小栗旬さん。キレのある殺陣シーンもさることながら、クローズZERO仕込みのケンカ風アクションもカッコよかったです。漫画版やアニメ版には、小栗旬之介というキャラクターが登場するエピソードがありますが、小栗旬さんとは一切関係ない人物です(多分)

 

 【私的評価】

59点/100点満点中

キャラクターのビジュアルや基本設定などは原作に忠実に再現しており、アクションシーンのカッコよさも申し分なかったです。

映画オリジナルで加えられているコメディシーンはかなり攻めていて面白く、オリジナルのクライマックスもアツくて良かったです。

ただ、キャラクター紹介の雑さは一見さんには不親切で、原作通りのコメディシーンは原作既読者にとっては目新しさに欠けるように感じました。

 

 

 

 

 

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映画『メアリと魔女の花』と原作小説『小さな魔法のほうき』(ネタバレあり)

 今回紹介する作品は

映画メアリと魔女の花です。

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【あらすじ】

大叔母の住む田舎町・赤い館村に引っ越してきたメアリは、遊びに出かけた森の中でエメラルド色の目をした黒猫と出会う。 猫の後を追いかけていくと紫色に光る不思議な花を見つけ、摘み取ってしまう。その花の名は“夜間飛行”。7年に1度しか咲かない花で、かつては魔女までが探し求めた花だという。明くる日、森の中で古びた箒を見つけたメアリは、誤って夜間飛行の蜜を箒につけてしまう。すると箒は激しく動き出し、メアリを乗せて空高くに飛び立つのであった…。

 

【原作】

原作はメアリー・スチュアートの児童小説『小さな魔法のほうき(原題・The little broomstick)』です。

小さな魔法のほうき (fukkan.com)

小さな魔法のほうき (fukkan.com)

 

 映画公開に合わせて『新訳 メアリと魔女の花』という、文庫本も出版されています。映画のタイトルがつけられた本ですが、中身は原作どおりで、映画版のノベライズというわけではないので、原作の内容を知りたい方はこちらを読んでも問題ありません。(オリジナル版の掛川恭子さんと新訳版の翻訳者は違う人なので、表現のちょっとした違いはありますが、ストーリーに変化はありません)

挿絵のついた児童文庫版も出版されていますが、映画版のメアリの絵柄で原作どおりのストーリーが展開されるので、映画を見た子供が読むと少し混乱するかもしれません。特にドクター・デイやフラナガンなどのキャラクターデザインは原作通りで、映画版とはまるで違うので違和感を感じるかも。

  本作は1971年に発表された児童文学(魔法学校ものとしてはハリーポッターより20年以上先駆け)で、原作者メアリー・スチュアートにとって初めての子供向け小説になります。

原作の主人公・メアリーは自分のメアリー・スミスという平凡な名前にコンプレックスを抱いているのですが、これは同じ名前を持つ作者の投影かもしれません。

  原作中に出てくる魔法の呪文はマザー・グースの詩を元にしており(映画版には出ませんが)呪文の語感の良さも魅力の1つです。

 

【スタッフ・キャスト】

本作を手掛けたのはスタジオポノック米林宏昌監督です。

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 米林監督作は『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』に続く3作目になります。3作とも原作ありの作品なので、個人的にはそろそろオリジナル脚本で監督の自力が見たいです。

メアリと魔女の花』は、スタジオジブリ制作部が解体になり、本作のプロデューサーである西村義明さんが立ち上げた“スタジオポノック”(ポノックとはクロアチア語で「深夜0時」のことを言い、新たな始まりという意味が込められています)の第一回長編映画で、米林監督曰く「ジブリの血を引いた作品を作ろう」という意気込みで制作された作品だそうです。

 その言葉通り、本作にはかつてジブリのスタッフとして活躍していた方々が多く関わっています。

例えば、作画監督稲村武志さんは『千と千尋の神隠し』の原画や『ハウルの動く城』の作画監督を務められた方で、背景を手掛けた男鹿和雄さんは『パンダコパンダ』時代から宮崎・高畑コンビを支える超ベテランの美術監督です。

このようなジブリの意思を引き継ぐスタッフによって作られたビジュアルはアニメーション的快感にあふれています。

主人公のメアリの声を担当したのは杉咲花さん。少々幼さの残る声が人としての成長途中のメアリにぴったり合っており、とても良かったです。

 

【私的評価】

72点/100点満点中

原作からの改変点が多々あった映画ですが、小説の根幹にあったテーマはしっかり抑えており、原作になかった新たな視点を持ち込むことで物語に深みを与えていました。

 美術も大変素晴らしく、カラフルな魔法界の景色は見ているだけでも楽しかったです。

ただ、物語の構成に気になる点もあり、やや冗長に感じられるところもありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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映画『忍びの国』と原作小説『忍びの国』(ネタバレあり)

 今回紹介する作品は、

映画忍びの国です。

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【あらすじ】

時は戦国。織田信長が天下統一のために次々と諸国を支配する中、唯一攻め込むのをためらった国があった。それは、“虎狼の族”と恐れられる忍び達が棲む国・伊賀である。信長の息子・信雄は伊賀の隣国伊勢を支配下におき、伊賀への侵攻も時間の問題となっていた。

そんな中、伊賀随一の忍者・無門は、妻の尻に敷かれ、地侍に雇われながら細々と暮らしていた。ある日、無門は地侍同士の小競り合いに駆り出され、下山次郎兵衛を決闘の末に殺してしまう。次郎兵衛の兄・平兵衛は伊賀の忍者たちに対し怒り心頭に発し、信雄に伊賀への侵攻を直訴するのであった…

 

【原作】

原作は和田竜さんの同名小説『忍びの国』です。

忍びの国 (新潮文庫)

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和田竜さんの著書の映画化は『のぼうの城』以来2作目になります。

本作は実際に起こった合戦「天正伊賀の乱」をベースに描かれた史実小説です。

主人公の無門は架空の人物ですが、日置大膳や下山甲斐守(平兵衛)などは実在した人物で、実際の歴史の流れに沿って物語が組み立てられています。

天正伊賀の乱にまつわる文献はかなり少なく苦労したそうですが、当時の書物を参考にしながら史実から逸脱しすぎないように物語を上手に膨らませています。(伊勢・伊賀の国の実態については『伊乱記』、忍者の実態については『正忍記』からの引用が多く見られます)

ちなみに、和田竜さんは脚本家としても活動しており、本作の脚本も務めています。

 

【スタッフ・キャスト】

本作のメガホンを取ったのは『アヒルと鴨のコインロッカー』や『殿、利息でござる』などを手掛けた中村義洋監督です。

殿、利息でござる! [Blu-ray]

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 中村監督と大野さんのタッグは『映画 怪物くん』以来2度目となります。

 『怪物くん』の時は元々あったドラマ版の映画化として監督を任されたのに対し、本作は原作に惚れ込んだ中村監督が自ら出版社に直談判し映画化権を獲得したそうで熱量の高さが伺えます。

主人公・無門を演じたのは人気アイドルグループ・嵐のリーダー大野智さん。

元々ダンスが上手いという印象は持っていましたが、ここまでアクションが映える俊敏な動きが出来るとは思っておらず、度肝を抜かれました。 普段はゆるーい感じなのに、いざという時はずば抜けた能力を発揮するキャラクター性が大野さんとぴったり合っており、これ以上にない適役でした。

 また、本作の衣装デザインには『座頭市』や『清須会議』などと手掛けた黒澤和子さん(黒澤明監督の長女)が携わっており、映画の華やかさを引き立てています。

 

 【私的評価】

73点/100点満点中

 中村監督が自ら出版社に掛け合い映画化権を獲得しただけあって、原作への経緯がしっかり込められており、誠実に作られている印象を受けました。

アクションシーンではパルクールなどを取り入れたアクロバティックな動きを多用し、忍者が戦うという設定にしっかりと説得力を持たせていました。

ただ、原作にあった痛快なシーンが一か所削られており、そこが残念でした。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレあり

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