雁丸(がんまる)の原作代読映画レビュー

原作読んで映画レビューするよ!

映画『ハルチカ』と原作小説「ハルチカシリーズ」(ネタバレあり)

 今回紹介する作品は

映画『ハルチカです

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【あらすじ】

美形で頭脳明晰なハルタと、気は強いが前向きで天真爛漫のチカ。幼なじみだが引っ越しで離れ離れになっていた2人は、高校で再会。憧れていた吹奏楽部が廃部寸前と知ったチカは、吹奏楽部で大好きなフルートを吹くために、ハルタを引っ張り込み部員集めに奔走するが……。

(映画.com様より抜粋)

 

【原作】

原作は初野晴さんの『ハルチカシリーズ』です。

 ハルチカシリーズは1巻目の「退出ゲーム」から始まり、現在までに5巻が出版されています。(番外編を合わせると6作)

 

テレビアニメ化やコミカライズ化もされていますが、このブログではあくまで原作小説との比較をしていきます。

 

原作小説は学園ドラマの中にミステリー要素を入れた「青春ミステリー」というジャンル(米沢穂信さんの『古典部シリーズ』などもこれにあたります)で、一巻ごとに4話ずつのエピソードが盛り込まれています。

 

映画版は静岡県の地区大会とその後までを描いているので、原作でいうと大体3巻までのストーリーになります。

 

【スタッフ・キャスト】 

本作でメガホンをとったのは「箱入り息子の恋」や「僕らのごはんは明日で待ってる」などを手掛けた市井昌秀監督です。(ちなみに市井監督はお笑い芸人「髭男爵」のトリオ時代のメンバーだったりもします。)

市井監督は主演の男女を瑞々しく撮る手腕に定評があるので、三木孝浩監督や廣木隆一監督に次ぐ恋愛映画の職人監督になってほしいです。

また、市井監督は本作で山浦雅大さんと共に脚本も務めています。

 

本作は吹奏楽部を舞台にしているので、音楽を手掛けた方々の役割は非常に大きいです。音楽プロデューサーの緑川徹さん、音楽プロデューサー兼、吹奏楽監修の濱野睦美さん。映画オリジナルテーマの「吹奏楽のための狂詩曲 第1番『春の光、夏の風』」を手掛けた作曲者の瀬村晶さん、編曲者の川明夏さん。この映画の音楽に携わった方々は、本当にいい仕事ををしてました。

 

主演は、Sexy Zoneのメンバー佐藤勝利さんと、Rev. from DVLのメンバー橋本環奈さん。若い2人がフレッシュな演技で主役の役割をきっちり果たしていました。

原作小説は、少しリアリズムから逸脱したキャラクター小説的な要素も含まれているので、こんな完璧な美男美女見たことねーよと思うぐらいの、アイドル性の高い2人のキャスティングはぴったりはまっていたと思います。

 

【私的評価】

75点/100点満点中

中盤とラストに泣けてしまう演奏シーンがあり、音楽の力で自分たちの世界を変えていくという要素が原作よりも強くなっていたように思います。

ただ、原作からの改変点やオリジナルの要素として、いかがなものかと気になる点もありました。

 

 以下ネタバレあり 

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映画『愚行録』(ネタバレあり)

 

 

初めまして、当ブログの管理人の鴈丸(がんまる)です。

このブログでは、新作映画とその原作となった小説、漫画、オリジナル版の映画を見たうえで、互いを見比べながら映画のレビューをします。

あくまで素人のレビューであり、読者の方の気に障ることを記してしまうこともあるかもしれませんがご容赦ください。

 

さて、今回紹介する作品は、こちら

『愚行録』

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【あらすじ】

ある時、エリートサラリーマンの一家が殺害され、世間を震撼させる。犯人が見つからないまま1年が過ぎ、改めて事件を追おうと決意した週刊誌記者の田中は取材を始める。関係者へのインタビューを通して、被害者一家や証言者自身の思いがけない実像が明らかになっていき、事件の真相が浮かび上がってくる。

(映画.com様より抜粋)

 

【原作】

原作は貫井徳郎さんの同名小説「愚行録」です。

愚行録 (創元推理文庫)

愚行録 (創元推理文庫)

 

貫井徳郎さんは『慟哭』で作家デビューし、『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を獲得した推理作家で、ミステリーの中に社会性を盛り込んだ作風が特徴です。

『愚行録』は第135回の直木賞の候補作品になっています。

 

 原作は、一家惨殺事件の被害者家族と交流のあった関係者6人が記者に対して証言をするというインタビュー形式の構成となっており、関係者の証言ととある女性のモノローグが章ごとに繰り返されます。

 

【スタッフ・キャスト】 

 メガホンをとったのは、今作が劇場用長編映画初監督となる石川慶監督

石川監督はポーランドの映画大学で演出を学んでいたそうで、本作の撮影監督はポーランド人のピオトル・ニエミイスキが務め、グレーディング(色彩補正)もポーランドで行ったそうです。そのため普段の日本映画ではあまり見ないような質感の画が多く見られます。

 

脚本は「マイ・バック・ページ」や「松ヶ根乱射事件」などを手がけた向井康介さん。

本作は叙述トリックが巧みに使われている映画化の難しい原作ながら、映像作品の脚本に上手く落とし込み、原作の根幹の部分もしっかりと受け継いでいました。

 

キャストは、物語の主人公となる雑誌記者を妻夫木聡さん、その妹を満島ひかりさんが演じ、闇のあるキャラクターを見事に演じ切っています。

 

【私的評価】

90点/100点満点中

登場人物ほぼみんなド畜生なのですが、それこそが人間味であり、自分が自覚していない嫌な部分を投影させられている気分になります。

あまり大きく原作を大きく改変せず、下手に感動路線に走らない作品作りに好感が持てました。

 

 以下ネタバレあり 

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